木が匂うのは材内の精油成分によるものです。精油成分はフィトンチッドとも呼ばれ、一樹種に十種類以上あるのが普通です。樹種によって種類、含有量が異なるので、スギの匂い、ヒノキの匂いというように特有な香りとなります。
木の匂いは人のいらいらを押さえてリラックスな状態を作り出しますが、他にもさまざまな作用があります。
ヒノキの匂いはヒノキの家、ヒノキ風呂といったように、日本人に特に親しまれ、好まれています。ヒノキの材油にはピネン、カジノール、ヒノキオールなどのテルペン類が多く含まれています。
ヒノキの心材は抗かび・抗菌作用があり、湿潤状態においても黴びにくく、腐りにくいことが知られています。さらに、ヒノキ材の木屑の中ではダニが死滅することが確かめられています。
ヒバについても同様です。脱臭作用についてはヒノキ材油は亜硫酸ガスに対し、ヒノキもシロアリに対し強い抵抗力をもっています。
精油成分の諸作用に対し、抗菌 防蟻 防ダニ 防虫 人の健康に関連して、マウスにヒノキの匂いを嗅がせると運動量が増加し、木製、コンクリート製、アルミ製の飼育箱で生後15日間の生存率がそれぞれ85%、7%、41%であったと報告されています。
木の匂いのもとでは、ラットの睡眠時の脳波に心地よく眠っている時に現れるα波が20~30%も増加したことが示されています。木の匂いはストレスによって現れる精神的発汗を抑え、心拍数も安定するので安眠が得られるのだといわれています。
ヒノキからの精油成分が、院内感染で問題視されるMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の発育を阻止すると発表され話題になりました(前国立小児病院 飯倉医長)。
こうしたことからにおい成分を取り出して、芳香剤や入浴剤に、さらに防かび・殺ダニ作用、脱臭作用、健康増進作用などを持つ精油を合板、ボードなど建材の一部に入れ込んだ芳香建材も開発されています。
また、繊維に匂いを付加した衣類、ハンカチ、寝具などのほか、カーペット、カーテンなども製品化されています。
これらでは匂いをいかに長持ちさせるかの徐放技術が問題になっています。